平成28年12月14日をもって、本学の伝統ある救急部を母体として「救急科学教室」を立ち上げました。教室運営の基本理念として、常に「患者中心(Patient centered)」に基づく診療の質の徹底的追究を掲げ、「救急科」に係る診療、研究、教育、地域貢献のそれぞれの領域において、教室員相互の連携によって救急医療の質の向上を図る組織を目指しています。また「救急科」の学問体系としての「救急科学」の確立を図り、その発展を牽引していきます。また、本教室の長として、皆様のご助言、ご協力を頂きながら、救急科および大学・病院・地域救急医療の発展に尽くす所存です。
救急科医は、疾病、外傷、熱傷や中毒などによる急病を診療科に関係なく診療し、特に重症な場合に救命救急処置、集中治療を行うことを専門としています。これらの担当領域を大きく分けると5つになります。『ドクターカーやドクターヘリを中心にした病院前診療・メディカルコントロール・災害医療』、『ER』、加えて『acute care
surgeonや外傷外科、IVR、緊急内視鏡などのサブスペシャリティ領域』、そして『クリティカルケア』です。もうひとつの重要な領域は、『急な傷病の予防』です。私たちは、しばしば地場産業と比喩される地域救急医療体制において、地域や医療機関ごとに、求められる多様な責務に弾力的に、かつ臨機応変、当意即妙に対応します。
本教室は、疾病や外傷の種類、治療の経過に応じて、適切な診療科と連携して診療に当たり、救急医療の知識と技能を生かして、病院前救護体制、救急医療、そして災害医療に指導的立場を発揮する人材を育成していきます。臨床では、現時点のわが国の救急医療に関連した問題点を検討して課題を設定し、具体的な対策と方略を提言していきます。これらのことを実現していくために、救急科を標榜したいという強いマインドを持った医師を広く求め、皆が前向きに快活に、臨床、教育、研究に没頭できるよう教室を運営いたします。
救急医療は国民の突然の傷病発生の際の健康保持を担う最後の砦です。医療機関を自らの意思で選定できない状況において、地域全体で標準的な医療を提供するように、教室員一丸となって努力していきたいと思っております。今後とも皆様方のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
平成29年 9月1日 救急科学教室教授 森村 尚登
救急科は、突発不測の急な傷病に対応する診療科であり、専門領域は病院前・災害時医療から救急外来、集中治療まで広範囲に及びます。これらの医療を支える医学が救急科学です。本学救急科学教室の研究主題の一覧を下記に示します。
当教室では、教室員が、規約を通じて活動の理念と方向性を共有しています。以下の抜粋をご参照ください。
東京大学医学部救急科学教室 教室員規約(抜粋)
Department of Acute Medicine, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
前文
東京大学医学部救急科学教室(以下教室)は、教室員相互の連携によって、救急医療の診療の質の向上を図る組織である。
第一章 総則
第1条 (名称)
本教室は、東京大学医学部救急科学教室と称する。
第2条 (定義)
東京大学医学部救急科学教室は、救急医療関連医療機関あるいはそれに係る組織等に所属する救急科医師およびそれに準ずる常勤医・非常勤医、救急医療関連職等により構成されるプロフェッショナルチームである。
第3条 (目的)
わが国における救急科学の発展を牽引すること。
第4条(事業)
教室は目的を達成するため、以下の事業を行う。
(1)救急科学に係る基礎的および臨床的な研究に貢献する。
(2)教室の運営方針に基づき、教室員、臨床研修医、医学生、救急隊員、看護師、その他関連職への教育に貢献する。
(3)教室の運営方針に基づき、救急医療に関連した知識・技術の市民啓蒙に努める。
(4)教室員の技能・知識の向上と多様な業務機会を得るため、ならびに関連医療機関の救急診療能力向上を目指した積極的な人事交流を行う。